新人が育たない飲食店に共通する3つの原因
飲食店を経営していると、「新人がなかなか育たない」という悩みはよくあります。
教えたはずなのにできない。
同じことを何度も注意する。
指示を出さないと動けない。
そんな状態が続くと、つい「本人のやる気がない」「仕事を覚えるのが遅い」と考えてしまいがちです。
僕自身も飲食店を運営し、これまで多くのスタッフと一緒に働いてきました。
その中で感じているのは、新人が育たない原因を、本人だけの問題にしてはいけないということです。
教える側の伝え方や、店の仕組み、働く目的の共有ができていなければ、新人は「何をどこまでできればいいのか」が分からないまま働くことになります。
特に飲食店は、接客、料理、ドリンク、片付け、電話対応など、覚える仕事が非常に多い現場です。
だからこそ、「見て覚えて」「分からなかったら聞いて」だけでは、人によって成長に大きな差が出ます。
この記事では、実際に店舗で新人教育に取り組んできた経験から、新人が育たない飲食店に共通する3つの原因と、僕が大切にしているスタッフ育成の考え方を紹介します。
原因①「見て覚えて」で教育が終わっている
飲食店では、「仕事は先輩の動きを見て覚えるもの」という教え方になりやすいと思います。
もちろん、実際の営業を見ながら覚えることは大切です。
ただ、それだけでは新人によって成長のスピードに大きな差が出ます。
例えば、先輩が料理を運んでいる姿を見ていても、
「料理名を伝える」
「お客様の前に丁寧に置く」
「空いた皿があれば下げる」
「飲み物が減っていれば次の注文を確認する」
こうした一つひとつの行動まで、新人が自然に理解できるとは限りません。
教える側からすると当たり前になっていることほど、新人には見えていないことがあります。
僕が新人教育で大切だと考えているのは、「教えたか」ではなく「できるようになったか」を見ることです。
一度説明したから教育が終わりではありません。
実際にやってみる。
できたことを確認する。
できなかったところをもう一度伝える。
そして、またやってみる。
この繰り返しが必要です。
さらに、「何ができれば一人前なのか」が新人自身にも分かる状態をつくることが重要だと思っています。
ドリンクはどこまで作れるのか。
料理はどこまでできるのか。
接客では何ができているのか。
できることを本人自身が確認できれば、「次に何を覚えればいいのか」が見えるようになります。
新人教育を経験や感覚だけに頼るのではなく、成長を見えるようにする仕組みをつくることが、育成の第一歩です。
原因②「作業」だけを教えて、仕事の意味を伝えていない
新人が入ると、最初はどうしても作業を教えることが中心になります。
「この料理はここに運ぶ」
「グラスが空いたら下げる」
「このドリンクはこの作り方」
「この時間になったら片付ける」
もちろん、こうした基本的な作業を覚えることは必要です。
ただ、作業のやり方だけを教えていると、「言われたことはできるけれど、自分からは動けない」という状態になりやすいと感じています。
例えば、お客様のグラスが空いているとします。
「空いたグラスを見つけたら次の注文を聞いて」と教えれば、その行動はできるようになるかもしれません。
でも、本当に伝えたいのは、その行動そのものではありません。
なぜ、それをするのか。
お客様に気持ちよく過ごしてもらうため。
「よく見てくれているな」と感じてもらうため。
より良い時間を過ごしてもらうため。
そこまで理解できると、教えていない場面でも「今、自分にできることはないか」と考えられるようになります。
僕はスタッフに、「作業」と「サービス」は違うという話をすることがあります。
言われてからするのが作業なら、お客様や周りの状況に気づいて、自分で考えて行動することがサービスです。
そのためには、「これをやって」と指示するだけではなく、なぜその仕事をするのかまで伝えることが必要です。
お客様は、家で食事をするよりも多くのお金を払って店に来てくださいます。
料理がおいしいことはもちろんですが、それだけではなく、接客、雰囲気、居心地、楽しい時間など、店で過ごす体験全体に価値を感じてお金を払ってくださっているのだと思います。
だから新人教育も、作業を早く覚えてもらうことだけが目的ではありません。
「自分たちの仕事は、お客様にどんな価値を提供する仕事なのか」
ここを共有することで、指示を待つだけではなく、自分で気づき、考えて動けるスタッフに成長していくと考えています。
原因③「できていること」と「次に覚えること」が見えていない
新人が育たない原因の一つに、本人自身が「今、自分はどこまでできているのか」を分かっていないことがあります。
飲食店の仕事は覚えることが多く、接客、ドリンク、料理、電話対応、片付けなど、仕事の種類もさまざまです。
その中で、
「もっと周りを見て」
「もう少し頑張って」
「早く仕事を覚えて」
と言われても、新人からすると「では、具体的に何ができればいいのか」が分かりません。
ゴールが見えない状態では、自分が成長している実感も持ちにくくなります。
だから僕は、スタッフが自分のできることを自分で確認できる状態をつくることが大切だと考えています。
例えば、
「このドリンクは一人で作れる」
「料理はここまでできるようになった」
「お客様への声かけはできている」
「次は周りを見て先回りして動けるようになりたい」
このように現在地が分かれば、次に何を覚えればいいのかも見えてきます。
ここで大切なのは、できていないことを見つけて評価するための仕組みにしないことです。
僕が必要だと考えているのは、スタッフに点数をつけるためのチェックではありません。
本人が、
「今の自分は何ができているのか」
「以前より何ができるようになったのか」
「次に何を身につけたいのか」
を自分で考えるための仕組みです。
教える側にとっても、本人の現在地が分かれば、「全部教えなければ」と考えるのではなく、次に必要なことを具体的に伝えやすくなります。
新人教育は、できないことを指摘し続けることではありません。
小さな「できるようになった」を積み重ね、本人自身が成長を実感できる環境をつくること。
それが、長い目で見たスタッフ育成につながると考えています。
新人が育つ店にするために、僕が大切にしていること
新人を育てるために必要なのは、マニュアルを作ることだけではないと思っています。
僕が大切にしているのは、新人自身が考える機会をつくることです。
例えば、スタッフとのミーティングで、
「今日、お客様から一つでも『ありがとう』をもらうために何ができるだろう?」
と考えてもらうことがあります。
答えは一つではありません。
空いたグラスに気づいて声をかける。
荷物を置く場所に困っているお客様にカゴを持っていく。
料理を出すときに、おすすめの食べ方を一言伝える。
大切なのは、「これをしなさい」と正解を教えることではなく、お客様や周りを見て、自分で気づく習慣をつくることです。
そして、営業が終わったあとに、
「今日は何をして『ありがとう』と言ってもらえた?」
と振り返る。
こうすると、ただ「もっと気を利かせよう」と伝えるよりも、具体的な経験として残ります。
人は、意識していないものにはなかなか気づきません。
反対に、「今日はこれを意識しよう」と決めて働くと、今まで見えていなかったことが少しずつ見えるようになります。
だから僕は、教えることと同じくらい、考える → 行動する → 振り返るという流れをつくることが大切だと考えています。
ミーティングも「話を聞く時間」にしない
スタッフミーティングも、店長からの連絡事項を聞くだけの時間にしてしまうと、育成にはつながりにくいと思います。
「仕事とは何だろう?」
「お客様はなぜこの店を選んでくれるのだろう?」
「作業とサービスは何が違うのだろう?」
こうしたことをスタッフ自身に考えてもらい、意見を出してもらう。
そのうえで、実際の営業で一つ行動してみる。
そして、自分のできることを定期的に確認する。
教えるだけではなく、考える機会と実践する機会をつくる。
これが、自分で考えて動けるスタッフを育てるために、僕が大切にしていることです。
まとめ|新人が育つかどうかは「育つ仕組み」で変わる
新人がなかなか育たないと、
「やる気がない」
「覚えるのが遅い」
「最近の若い子は難しい」
と、本人の問題として考えてしまいがちです。
もちろん、本人の姿勢も大切です。
ただ、僕はそれだけではなく、店側に「人が育つ環境」があるかを見ることも必要だと考えています。
今回紹介した、新人が育たない3つの原因は、
- 「見て覚えて」で教育が終わっている
- 「作業」だけを教えて、仕事の意味を伝えていない
- 「できていること」と「次に覚えること」が見えていない
というものでした。
一つひとつの仕事を教えることはもちろん必要です。
でも、それだけではなく、
なぜこの仕事をするのか。
お客様にどんな価値を届けるのか。
今の自分は何ができているのか。
次に何をできるようになりたいのか。
ここまでスタッフ自身が考えられる環境をつくることが、人材育成では重要だと思っています。
僕自身も、最初からこのような育成ができていたわけではありません。
実際の店舗でスタッフと働く中で、教えてもうまく伝わらなかったり、同じことを何度も伝えたりしながら、少しずつ教育の方法を見直してきました。
そして今も、ミーティングや自己チェックなどを取り入れながら、より良い育成の仕組みを試しています。
人材育成に、すべての店で通用する一つの正解があるとは思っていません。
だからこそ、スタッフ個人の問題だけにするのではなく、「店として変えられることはないか」を考え続けること。
それが、人が育つ店をつくる第一歩だと考えています。
スタッフ育成の仕組み、一緒に整理します
「新人を教えてもなかなか定着しない」
「店長によって教え方が違う」
「スタッフが指示待ちになっている」
「教育の仕組みを作りたいけれど、何から始めればいいか分からない」
そんな悩みがあれば、現在のお店の状況を聞きながら、育成の仕組みを一緒に整理します。
小さな飲食店だからこそできる、現場に合った方法を考えていきます。
投稿者プロフィール

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滋賀県東近江市で「炉端・炭火焼 えん」を運営。
飲食店の現場で実践してきた原価管理、人材育成、業務改善、AI・IT活用などを発信しています。
現場で試し、数字で考え、仕組みにすることを大切にしています。
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